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昨今、なぜ「工務店・ハウスメーカーの倒産」が増えているのか
近年、日本の建築業界では中小〜零細の工務店やローコストを売りにするハウスメーカーの倒産が急増しています。国や専門機関の統計にもそれが示されています。
2024年、建設業の倒産件数は過去最多の「1,890件」に。従業員10人未満の小規模工務店が多くを占めています。
倒産の背後には、建材費や人件費の高騰、職人不足、人口減少による住宅需要の落ち込み、コロナ禍で借りた融資の返済負担、後継者不足など、複数の構造的な課題が重なっています。
小さな利益を前提とするビジネスモデル、いわゆる「薄利多売」「ローコスト住宅」の構造的な限界も指摘されており、こうした会社ほど倒産リスクが高いとされています。
このような背景から、かつては「安さ」が魅力だったローコスト住宅メーカーに依頼した多くの人が、家づくりの途中で倒産に巻き込まれ、工事中断や未完成、住宅ローンだけが残るという苦しい状況に直面しています。
実際、2025年にも「家づくり途中で2000万円支払ったのに家が建たなかった」という事例が報道されています。
倒産しやすい工務店・ハウスメーカーの共通する「危険サイン」
以下は、最近の報告から見えてきた、「倒産しやすい/トラブルになりやすい会社」に共通する特徴や警告サインです。
「ローコスト」「安さ重視」を強調する会社
→ 要するに、「安さ」に目を惹かれて契約を急ぐと、実は“大きなリスク”を抱えている可能性があります。
経営基盤が脆弱 — 小規模または資金繰りに余裕がない
→ 規模が小さく、安定性に乏しい会社は「今の受注で回している状態」である可能性が高く、注意が必要です。
契約を急がせる・過剰な割引を打ち出す
→ いきなり「安くします」「今契約すれば得です」と言われても、焦らず冷静に契約内容や会社の財務状況をチェックすべきです。
着工・工事開始の遅れ、工事途中での連絡不備
→ 進捗が遅いだけでなく、「説明責任が果たされているか」をきちんと見ることが重要です。
保証制度や完成保証がない、明示があいまい
→ 「言った・言わない」にあいまいな口頭説明だけでは不十分。書面で保証の有無・内容を必ず確認しましょう。
住宅ローンだけが残る最悪のケース — なぜ起きるのか

倒産によって家が建たないまま、あるいは途中で工事が止まったままでも、住宅ローンの返済は待ってくれません。
以下のような理由で、この“二重の地獄”が起きやすくなっています。
こうしたケースは「夢のマイホーム」が「負債」と「心の傷」になりかねません。特にローン返済が長期間にわたる場合、家族の生活設計そのものが大きく狂ってしまいます。
実際、2025年にも「新築を依頼して2000万円支払ったのに、更地のまま」という事例が報道され、多くの施主が途方に暮れています。
どんな工務店・ハウスメーカーを選べば安全? 倒産リスクを減らすチェックポイント
家づくりを考えているなら、以下のチェックリストをぜひ使ってみてください。できるだけ“危険な会社”を避け、安全性の高いパートナーを選ぶための目安に。
過去の実績・施工例を確認する
過去に建てた家の見学会やOB(過去の顧客)を訪問し、実際の建物品質を自分の目で見る。雑誌やWebの写真だけでなく、リアルな住まいをチェックするのが安心。
工務店の創業年数だけでなく、直近数年の施工実績や受注実績が安定しているかを見る。
繁忙期だけ仕事を詰め込んでいないか、無理な受注はないかを確認。
支払いスケジュール・契約条件の確認
着手金や前払い金に要注意。あまりに高率で前払いを求める会社は、資金繰りに余裕がない可能性あり。通常は段階に応じた支払いが理想。
「着工前」「基礎完成時」「上棟後」「完成時」など、支払いのタイミングが分かれているか、契約書で明記されているかをチェック。
保証制度や完成保証、アフター保証の有無を確認
工務店が所属する業界団体の保証制度、または住宅完成保証制度が利用可能か。加入状況を必ず契約前に確認。
万が一倒産しても、一定額の払い戻しや建物完成保証があるか。また、アフターサービスやメンテナンス体制が契約書で担保されているかを確認。
建築中の現場を自分の目でチェック
工事が始まったら、定期的に現場を見に行く。資材の乱雑さ、作業の進み具合、職人の数、報告・連絡のタイミングなど、現場の“義理感”が倒産リスクの前兆になることもある。
担当者や営業の対応が曖昧、連絡が遅い、急な担当者変更などがある場合は要警戒。
複数社と比較。安さだけで選ばない
「安ければいい」というだけで選ぶのは危険。似た条件・同価格帯の複数社を比較し、施工内容・保証・支払い条件などを慎重に比べるべき。
安易な割引キャンペーンや契約急かしのトークには注意。見た目の安さに飛びつかず、冷静に「本当に安全か」を判断する。
なぜ今この問題が起きやすいのか — 背景と業界トレンド
近年、住宅業界を取り巻く環境が大きく変化し、「かつてのように安く家を建てられる時代」は終わりつつあります。
その結果、小規模工務店の経営体力の限界があらわになってきました。
世界的な資材価格の高騰、物流コストの上昇、円安などで建築コストが急上昇。これを価格に転嫁できない小規模工務店は、利益を圧迫され経営が苦しくなっているようです。
職人や建築関連の人手不足、高齢化による人材の減少も要因の一つと考えられます。職人の確保が難しくなり、工事の遅れや品質低下が起きやすくなっている可能性もあります。
日本全体の人口減少・少子高齢化により、新築住宅を希望する世帯自体が減少。特に地方では新築需要が低迷し、住宅メーカーの受注チャンスが減っています。
コロナ禍での融資に頼った工務店も多く、返済が本格化する2023年以降、売上回復が見込めないまま資金繰りに行き詰まる会社が増加。
こうした「三重苦(コスト高、人手不足、需要減)」によって、特に資金力や余裕のない中小/零細工務店の倒産リスクが急増しています。
万が一、工務店が倒産してしまった場合の“救済策”と注意点

もし契約中の工務店が倒産した…という最悪の事態に直面した場合、どうすればよいか — 代表的な対策と注意点をあげます。
- 住宅完成保証制度の利用:この制度を利用している会社であれば、万が一倒産しても補償の対象になる可能性があります。契約前に加入の有無を確認しておくことが大切です。
- 契約書と保証内容の写しを必ず保管:保証や返金対応は口頭ではなく書面で。後から「言った・聞いていない」で揉めないよう、書面で確認を残すこと。
- 別の施工会社への再契約は慎重に:途中で別の会社に再依頼する際も、上記チェックポイントをもう一度見直す。安易な業者選びは二重のトラブルを招く。
- 弁護士や専門家への相談を検討:被害が大きい場合、法律的な対応(返金請求、損害賠償請求など)を検討。特にローンと支払済み金が多額な場合は慎重に。
ただし実情として、「支払ったお金が全額戻る」「すぐに再契約できる」という保証はほとんどありません。
あくまでも「ダメージをできるだけ小さくするための備え」として捉えるべきです。
まとめ:家づくりは“安さより安心”“短期より持続”で判断を
夢のマイホームは人生の大きな買い物。家族の将来や生活設計に直結するからこそ、「安さ」「見た目の良さ」「営業マンの言葉」のみで決めず、時間をかけて慎重に検討すべきです。
2025年現在、多くの中小工務店やローコスト系ハウスメーカーが倒産の危機に直面しており、すでに「家が建たない」「ローンだけ残る」という悲劇が現実に起きています。
安心して家を建てたいなら…
こうした手順を“めんどくさがらず”に踏むことが、後悔しない家づくりへの近道です。
将来、「あのときちゃんと調べておいてよかった」と思えるよう、覚えておいてほしい視点です。


