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2025年12月、沖縄周辺の公海上で中国軍機が日本の戦闘機に対して火器管制レーダー(FCR)による「照射(ロックオン)」を行ったとして、日本側が中国に抗議を行ったと発表しました。
この種の「レーダー照射」は、単なる技術的接触以上に「危険な行為」と受け取られやすく、地域の緊張を高めます。
まずは事実関係の整理をしてみましょう。
なぜ火器管制レーダーの照射は問題になるのか
火器管制レーダーは、通常はミサイルや機関砲を狙う直前の段階で用いられる能力で、相手に「狙われている」と明確に示します。
飛行中の機体に対してFCRが向けられると、それは単なる監視ではなく、撃墜可能性を示唆する「敵対的な行為」に映るため、誤解や偶発的衝突のリスクを格段に高めます。
実務上は「安全な航行・飛行のために必要な範囲を超えた」と見なされることが多く、国際的にも問題視されます。

まぁ、とりあえず警戒しなきゃいけない…ってことね…
中国の照射は「軍事的示威」か「誤操作」か?――意図を読むポイント
中国側が照射を行ったとき、その“意図”は少なくとも次のいずれか、あるいは複合的に働いている可能性があります。
政治的・戦略的メッセージ(牽制・威嚇)
近年のPLA(中国人民解放軍)の活動は、軍事力の展示を通じて政治的メッセージを送る傾向が強まっています。
大規模演習や艦隊の展開、そして時に「危険と感じられる接触」は、相手(日本や米国など)に対する意志表示や牽制として機能します。
米国の対中報告書や各種分析でも、PLAが軍事能力を“政治的発信手段”として使う事例が指摘されています。
ルール・手順の曖昧さ(運用ミス・判断ミス)
海空での遭遇は通信や識別が難しく、誤認・誤操作が生じる余地があります。
特に複数国の艦載機・艦艇が混在する場面では、レーダー種別の判断や、どの周波数で照射されているかの解析に時間がかかり、誤解が拡大することもあります。
技術的に同種の波形を発する装置が複数あるため、事後解析で意図判断が難しくなる点もあります。
グレーゾーン戦術(権益主張・常態化狙い)
相手国の反応を見ながら「やれる範囲」を押し広げ、結果として自国側の行動半径やプレゼンスを常態化させる――いわゆるグレーゾーン戦術の一部とも解釈できます。
直接的な武力行使に至らない“ぎりぎりの圧力”を繰り返し、現状変化を図る手法です。

考えられる意図としてはいくつかあって、必ずしも狙っているわけじゃないってことなんだろうけど…普通に怖いっす…
過去の韓国(ROK)レーダー照射事件を振り返る:2018年の「日韓レーダー照射」問題

2018年12月、海上自衛隊の哨戒機(P-1)が韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーに類する照射を受けたとして、日韓間で大きな外交・防衛上の論争になりました。
日本は“STIR-180”のような火器管制レーダーによる連続照射を主張し、「極めて危険」と非難。
韓国側は当時、救助活動中でありMW08などの対空・監視レーダーを使っていたと説明し、意図的なロックオンは否定しました。
両国は音声やレーダー記録のやり取りを巡って対立し、最終的に事実関係をめぐる完全な一致には至らないまま、協議を重ねる形となりました。
当時の防衛大臣の対応(日本・韓国)
- 日本側(当時の防衛大臣・発言):
当時の日本防衛大臣は「極めて危険」と強い言葉で問題視し、韓国側に再発防止を求めると同時に、映像やRWR(受信記録)などの公開・提示を通じて事実を民間にも示す方針をとりました。
これが外交的緊張を高める一因にもなりました。 - 韓国側(当時の国防担当閣僚・発言):
韓国側の国防当局は同時に、艦側のレーダー運用は救助目的だったと説明し、低高度での日本哨戒機の飛行が問題であると反論するなど、相互に強い主張がぶつかりました。
最終的に軍事間の協議体での議論を継続することで沈静化を図りました。
(※防衛大臣の名前や細かな発言は当時の公式発表や会見記録に基づきます。主要なやり取りは防衛省・国防省の公式文書や報道で確認できます。)防衛省

結局何だったのかは分からぬままだったのか…
「過去と今」をどう比較するか――対応として何が学べるか
過去(2018年)の日韓事案と、今回(2025年)の中日(あるいは中日・日米同盟を含む)での照射報道を比べると、いくつかの学びが見えてきます。
- 証拠の共有と透明性が鍵:
レーダー周波数のログ(RWR記録)、通信記録、機載映像などを早期に交換できるかどうかで、対立の長さと激しさが変わる。2018年はこの点で齟齬が続いた。 - 政治的なメッセージと軍事的リスクのバランス:
軍は政治からのプレッシャーを受けつつも、事故や誤認を避けるためのルール(CUES=Code for Unplanned Encounters at Sea など)の順守が重要。
過去の事例ではルール解釈が争点になったことも。 - 同盟協調と情報共有の仕組み:
日本が米国やオーストラリアにブリーフィングした例のように、同盟国間での早期情報共有が抑止や外交対応で効果を発揮する場面がある。

「こちとら何もしないわけではないですよ」ってことを示すためにも、こういった行動をすることも大事だな…
日本や韓国の「防衛大臣」的な立場から見た対応の選択肢
防衛大臣レベルで取れるアクションには、概ね以下の選択肢があります。
実際の選択は政治判断も絡みますが、軍事的・外交的な面での“優先順位”は重要です。
- 公式抗議(外交ルート)と事実の提示:
まずは政府間で強く抗議し、同時に証拠を示して国内外に説明する。 - 共同調査・ワーキンググループの提案:
誤解解消と再発防止のために、軍事当局間でデータ交換や手順見直しを行う。 - 同盟国との連携強化:
必要に応じて同盟国に情報共有し、外交的な後押しや地域での抑止を図る。 - ルール(CUES等)の運用徹底と教育強化:
現場レベルでの運用基準を明確化し、類似事案の再発を防ぐ。
最後に:中国の「意図」は一義的に断定できないが、対応は明確に
結論として、中国が今回(2025年)の照射で何を最優先していたか――例えば純粋な威嚇、意図的なエスカレーション、あるいは運用上の誤認――は単一の資料だけでは断定できません。
ただし、過去の事例や軍事分析からは「メッセージ性(政治的狙い)」「グレーゾーン戦術」「運用上の誤認」の三つの要素が複合している可能性も考えられます。
重要なのは、事後の透明性(証拠提示)、制度的ルールの順守、そして同盟国との効果的な情報共有——これらが再発防止と地域の安定に直結する、という点です。

まとめ(要点整理)
2025年の報道では、中国軍機が日本機に火器管制レーダーを向けたとして日本が抗議。火器管制レーダーの照射は「非常に危険」と受け取られる。
レーダー照射の「意図」は単純には決められないが、「政治的メッセージ」「グレーゾーン戦術」「運用ミス」が候補として挙がる。これらは相互に重なる可能性が高い。
2018年の日韓レーダー問題を踏まえると、証拠共有・ルールの徹底・同盟間連携が再発防止の鍵になる。防衛大臣レベルでは、公式抗議・共同調査提案・同盟連携強化などが選択肢となる。

まぁ何にしても紛らわしいことはやめていただきたい…


